Wi-Fiが飛んだ日
- 智佳 斉藤
- 7月28日
- 読了時間: 3分
当キャンプ場には各種携帯キャリアの電波はもちろん、Wi-Fiなんて・・・「それって美味しいの?」って思うくらい無縁な存在でした。
誰に何を言われても、デジタルデトックスの素晴らしさや人間本来の在り方を暑苦しく語り、二度とWi-Fiなんて単語を口にしないようにと諭す日々でした。
しかし、実のところ、キャンプ場開拓時から既存のNTT電話線の活用や、ケーブルTV、各社プロバイダーさんにも相談し、なんとかできないものかと八方手を尽くしておりました。
それはそれは、水面を優雅に漂う白鳥の如く。
もちろん、自然界におけるWeb回線が果たしてどこまで必要か?なんて問題は普通の人以上に正対し、もうお腹いっぱい状態ですのであらゆるご意見は次の機会に食べるとします。
しかしながら、現代においては水や電気と同等に必要とされるインフラとなってきているのも事実。また、自身がキャンプ場を出た後に鳴り続けるスマホからのメールやSNS,不在着信の嵐(これは本当に心臓によくない)。
なにも川のせせらぎに虫の鳴き声の中、AmazonプライムやNetflixで映画を観たいわけじゃないにせよ、仕事に必要な連絡や作業ができるに越したことはありません。
むしろ、ここは会員制キャンプ場。そこさえクリアできれば連泊によるストレスもなくなり、それこそワーケーション(もう死語でしょうか)も可能です。
そこで導入したのがイーロン・マスク氏が率いるスペースX社のスターリンク。
同社の通信衛星を経由したインターネット回線です。
導入に至っては初期費用や月々の契約料など障壁があったもののここ1年で手の届くものになってまいりました。
しかし一番手をこまねいたのはお金よりも「開けた空問題」があります。
北に向かって120度の開けた空間というものが山の中にあっては厳しい条件で、導入しても無用の長物になりかねないリスクがあったのです。
むしろ当キャンプ場はハンモック天国が名乗れるほどの林間サイトが自慢です。
とは言え、ダメ元で導入しテスト。結果、衛星の位置によりロストする時間もありながら、ネット回線を確認できました。
先日は会員さんと一緒に本格設置作業も完了し、またひとつ文明に近づけました。

「キャンプは不自由を楽しむもの」
という声は昔からあります。「武士は食わねど高楊枝」みたいなもので、個人的に嫌いではないですが、やはり“やせ我慢は美しい”文化の名残かと思います。
無論、ないものはないので、どうしようもない。
あるものだけで勝負し、作れるものは創るしかないし、それはそれでおもしろい。
個人的に思うのは「キャンプは幸せのハードルを下げるもの」だと考えています。
雨や雪、暑さ寒さをしのぐ。少ない調理器でご飯をつくる。危険な虫や獣から身を守り夜を超す。あれがない、これがない!ということも踏まえ、解決策を探る経験の後、自宅に戻った際には、壁や天井、リモコンでつく電灯に快適温度を保つエアコン、寝具にいたるまで「なんてありがたいんだ!」と思えます。
壁をさすりながら「ありがとう」とつぶやき、家族に気持ち悪がられる始末です。
こうなると、日常のあらゆることに感謝の気持ちを忘れずに過ごせるという意味で先の幸せのハードルを下げるものという言葉に繋がります。
ネット回線の有無どころか、その速さや容量に不満を言う時代にあって、その傲慢さに気づき謙虚にネットを楽しめればいいなと考えております。


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